作品紹介

「だいちの星座ーたかはぎ座」

市内全小学校の全児童が参加して電波を反射
「たかはぎ座」の活動では、高萩市内の全小学校(4校)の全児童が参加したレクチャーと、3~6年生を対象にワークショップが実施された。4校の校庭にそれぞれ教員によって引かれた白線を目印に児童らが整列し、片面にアルミ箔を貼った電波反射板を手に持ち、人工衛星の通過する方位に揃えて角度を固定した。現地撮影時刻には約1,200名の児童が参加して、各小学校のグラウンドごとに大きな「星雲」を描くことに成功し「たかはぎ座」は完成した。なお、「たかはぎ座」では本活動では唯一となる、全撮影箇所での「だいち2号」地上観測用電波の受信と、(校内放送等による)その音の実時間共有がなされ、聴覚を通して宇宙と地上を結ぶイメージを児童らに届けた。

だいちの星座ーたかはぎ座 / 鈴木浩之+大木真人 / 2017

たかはぎ座

イントロダクション

2016年7月19日午前0時39分、深夜。
地球観測衛星「だいち2号」がモンゴルの草原の上を静かに飛んでいく。電波反射器の並んだ広場に集まった人々は、昼間の活動では見えない人工衛星の光を静かに目で追う。

本書で紹介する《だいちの星座》の作品は、一見すると〈夜空に浮かぶ星と星座〉に見えるが、JAXAが運用する「だいち2号」の観測画像を利用して制作した地上絵だ。人々が手作りの電波反射器を配置し、「だいち2号」が通過する方位に向ける。地上絵には観測されたデータと画像処理によって「1等星」や「星雲」が浮かび上がり、それらを結んだ新しい星座が地上に表れる。

 

ウランバートル郊外での深夜の実験の様子/この写真の最上部に、現地の参加者らが見た「だいち2号」の光跡が写っている。

プロフィール

鈴木浩之

[金沢美術工芸大学美術科油画専攻 准教授/だいちの星座プロジェクト代表]
1972年静岡県浜松市生まれ、石川県金沢市在住

ブレラ国立美術学院(ミラノ)への留学を経て帰国、2010年より地球観測技術を利用して地上に「星空」を描くプロジェクトを行っている。2010年に本活動の前身となる研究が文化庁メディア芸術クリエイタ育成支援事業に採択され、2012年にはアーカスプロジェクトの地域プログラム関連企画として宇宙芸術ワークショップ「ノアのはこぶ『絵』」を実施するなど、芸術と科学、とりわけ宇宙に関係した表現技術の開発に取り組んでいる。

2008 – 現職
2004 金沢美術工芸大学 美術科 油画専攻 講師( – 2008)
2000 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科博士後期課程修了(学位取得)

[主な展示・発表歴]
2016 KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭、茨城
2012 メディアパフォーマンス「 ノアのはこぶ『絵』」 アーカススタジオ、茨城
2011 個展「 Point in the park」 アートスペ スキムラ ASK?、東京
2006 グループ展「ASIANA」 ムディマ財団、ミラノ、イタリア

[主な受賞歴]
2010 平成22年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業採択
2009 第12回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品
2007 第10回文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品
2002 イタリア政府給費留学生(– 2003)
2001 ロータリ国際親善奨学生(– 2002)


©Hajime KATO

 

大木真人

[宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター研究開発員]
1982年神奈川県相模原市生まれ、茨城県つくば市在住

2007年より、宇宙航空研究開発機構地球観測研究センタにて、宇宙からのリモートセンシング技術およびそれらの教育や芸術などへの応用について研究を行っている。2010年、IEEE GRSS Japan Chapter 若手研究者賞受賞。2012年より、金沢美術工芸大学・鈴木浩之の主宰する地球観測衛星を用いた芸術プロジェクトに参加している。IEEE、日本リモートセンシング学会の各学会に所属。

2016 KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭、茨城
2012 ゲスト参加「ノアのはこぶ『絵』」アーカススタジオ、茨城
2010 IEEE GRSS Japan Chapter 若手研究者賞受賞

2007– 宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター研究開発員
2007 東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 修士課程修了
2005 東京工業大学 理学部 地球惑星科学科卒業


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